PARASOPHIA 京都国際現代芸術祭2015

Parasophia Conversations 01: アレクサンダー・ザルテン×北野圭介「21世紀のイメージ・トラフィックを考える」京都芸術センター 2014年11月16日

『アジア秘密警察』［日本版］
1966（日活）、97分、35mm、カラー
監督：松尾昭典　脚本：山崎巌　出演：二谷英明、浅丘ルリ子、宍戸錠、ウォン・ハップ、フォン・イン
上映協力：日活株式会社

『アジア秘密警察』［香港版］
1967（日活・ショウブラザーズ）、97分、DVD上映、カラー　© Licensed by Celestial Pictures Limited. All rights reserved.
監督：松尾昭典　脚本：山崎巌　出演：ジミー・ウォング、浅丘ルリ子、宍戸錠、ウォン・ハップ、フォン・イン
上映協力：Celestial Filmed Entertainment Limited

東アジアをまたがる追跡を伴う、古典的な秘密諜報員の冒険劇。アジア警察秘密情報部の諜報員である主人公が宍戸錠率いる国際密輸組織と戦うが、彼は、自身の過去にまつわる秘密を発見することになる……。映像は色彩に富み、また、本作がその手本とするジェームズ・ボンド映画のような秘密兵器が数多く登場する『アジア秘密警察』は、日活と香港のショウ・ブラザーズの共同製作作品である。本作には、異なる主役で撮影された2つのバージョンが存在する。香港で公開したバージョンでは、香港のスーパースター、ジミー・ウォングが、日本公開のバージョンでは、日活の俳優、二谷英明が配役された。映画の終結部で展開する国際的な家族のドラマは、植民地時代に遡る家庭メロドラマを通して、アジアにおける戦後の諸関係を解決しようとする試みである。2つのバージョンを比較するのは魅力的であり、また、松尾の創意に富む視覚的スタイルは、全アジアを激しく起伏しつつ移動するような体験へと本作を仕立てている。（ザルテン）

写真：『アジア秘密警察』［日本版］

『ホノルル・東京・香港』（監督：千葉泰樹、1963、102分、35mm）
1963（東宝＝キャセイ・オーガニゼーション）、102分、35mm
監督：千葉泰樹　脚本：松山善三　出演：宝田明、ユー・ミン、加山雄三、星由里子、草笛光子
所蔵：東京国立近代美術館フィルムセンター

1960年代初頭に始まった、東宝と香港のMP＆GIによる幾つかの共同製作作品のひとつである、宝田明とユー・ミンの民族を越えたロマンス。この陽気なコメディは、ハンサムな日本人兵士や、現地の女性とのロマンスを扱う植民地時代における日本映画と興味深い緊張関係にある。（ザルテン）

写真：京都府京都文化博物館 フィルムシアター

『あんにょん由美香』
2009（スポッテッドプロダクションズ）、119分、35mm、カラー、R15
監督：松江哲明　出演: 林由美香、ユ・ジンソン、キム・ウォンボク、いまおかしんじ
上映協力：株式会社スポッテッドプロダクションズ

自身の活動期において最も著名なAV女優の一人であった林由美香の記念イベントで、松江哲明は、彼女が主演していた無名の韓国製ポルノ映画のあるシーンを目にする。このはっきりしないテープの出所、そしてそれらの映像が持つ意味に興味を惹かれ、彼は、当時の出演者たちと製作チームを見つけるために韓国へ向かう。それは思いもよらない交流を生むこととなる。（ザルテン）

『サウダーヂ』
2011（空族）、167分、35mm、カラー
監督：富田克也　脚本：相澤虎之助、富田克也　出演：鷹野毅、伊藤仁、田我流、ディーチャイ・パウイーナ、尾﨑愛、工藤千枝
上映協力：空族

建設作業員、ブラジル人移民、右翼のラッパー、タイ・バーのホステスたちが、山梨県甲府市を舞台にぎこちない人間関係を構築する。本作は、経済的不況にある隔離された地方共同体のなかで、新しい種類の社会を形成することに関する問題を探求する。グローバリゼーションと、グローバリゼーションに惹きつけられる感情、それに起因する後悔や怒りが日本の一地方で渦巻く。（ザルテン）

『アジアはひとつ』
日本ドキュメンタリストユニオン（NDU）、1973、96分、16mm
上映協力：神戸映画資料館

日本ドキュメンタリストユニオンは、日本で最も国際的な思想を持ったドキュメンタリー制作集団の一つである。彼らは映画撮影のためにアジアと中東を横断し、常に日本を地球規模のシステムの一部として位置付ける。この魅力的な作品は、沖縄と台湾の間を移動することで日本による植民地拡大によって残された足跡と、日本と「アジア」の間の歴史の中に自身の場所を見つけようと試みる諸々の声を調査する。（ザルテン）

『中国の鳥人』
1998、118分、35mm、カラー
監督：三池崇史　原作: 椎名誠　出演: 本木雅弘、石橋蓮司、マコ・イワマツ、王麗黎
上映協力：セディックインターナショナル

ビジネスチャンスを探し、中国の奥地の村へと旅をするサラリーマンとヤクザを描いたこの物語は、本木雅弘と石橋蓮司が主演を務める。1990年代以降の多くの映画と同様に、詩的かつ美しく撮られたこの映画は、アジアを現代日本と対照的に神秘的な古の場所として描きながらも、他の多くの作品とは異なり、本作はこの種の単純なエキゾチシズムを複雑化しようとしている。（ザルテン）

『地球で最後のふたり』
2003（クロックワークス）、117分、35mm、カラー
監督：ペンエーグ・ラッタナルアーン　出演：浅野忠信、シニター・ブンヤサック、ライラ・ブンヤサック、松重豊、竹内力、三池崇史
上映協力：クロックワークス

日本、オランダ、タイ、フランス、シンガポールの合作である本作は、タイに暮らすある日本人男性の物語に基づいている。彼の人生は、逃亡してきたヤクザの兄の登場によって変わっていく。プラープダー・ユンによる脚本、三か国語で撮影され、主演に浅野忠信を起用し、タイ人が監督を務めた。数々の賞を受けたこの作品は、他の作品よりもはっきりと映画作品が単純に一つの「国籍」へと割り当てられうるのかどうかを私たちに問う。（ザルテン）

『極東のマンション』
2003、32分、8mm、カラー　※今回はDVDでの上映になります
構成・撮影・編集：真利子哲也
上映協力：真利子哲也

ファンタジーとフィクションにまたがる魅力的かつ興味深い旅において、真利子哲也は、日常生活に捕らわれながら映画をいかに作るか探求する。自身の部屋とカンボジアの村落の間を飛ぶように移動しながら、真利子は、映画空間と個人的・内的な空間の間にある奇妙で深淵な繋がりを、私たちの私的空間と最もつながりの深い映画のメディウムである8mmフィルムを用いて探求する。（ザルテン）

『波涛を越える渡り鳥』
1961（日活）、79分、35mm、カラー
監督：齋藤武市　原作：原健三郎　脚本：山崎巌　出演：小林旭、宍戸錠、浅丘ルリ子、白木万理、小高雄二
上映協力：日活株式会社

「渡り鳥シリーズ」第六作となる本作では、小林旭が再び銃とギターで武装したさすらい人を演じ、従来の作品におけるお決まりの「無国籍」な領域から主人公を外国へと連れ出した（香港とタイでの海外ロケを行った）。本作では日本の植民地主義の歴史に密接に関連する、国際的な家庭メロドラマが展開する。（ザルテン）

『ディア・ピョンヤン』
2005、107分、35mm、カラー　© Yonghi Yang
監督・脚本・撮影・ナレーション：ヤン ヨンヒ［梁英姫］
上映協力：スターサンズ

監督ヤン ヨンヒは、国と世代をまたぐ彼女自身の家族の離散に対して、一つの見解を示す。緊張とユーモアに満ちた父との長い議論において、三人の息子を北朝鮮へ送り住まわせた父の、北朝鮮に対する複雑な関係を理解しようと努める。（ザルテン）