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Our Parasophia
  • 京都大学教授 吉岡洋さん|ボランティア
  • 同志社大学 文学部美学芸術学科2年 好光義也さん|プロジェクトスタッフ
  • 京都造形美術大学 美術工芸学科現代美術・写真コース4年 花田康史さん|プロジェクトスタッフ
  • 画家・高校美術非常勤講師 児玉彩さん|プロジェクトスタッフ
  • 一般財団法人ニッシャ印刷文化振興財団 事務局 事業担当 竹澤恵太さん|スポンサー&寄付
  • 株式会社細尾 代表取締役社長 細尾真生さん|スポンサー&寄付
  • 立命館大学映像学部 4年 キム・キョンミンさん|ボランティア
  • 半公式のフリーペーパー
    『パラ人』という「半公式」フリーペーパーの、編集長ならぬ「パラ集長」をしています。河本信治さんから「プロフェッショナルアドバイザリーボードのメンバーになってください」と頼まれたのが、PARASOPHIAに関わるきっかけでした。最初のミーティングの際に、「PARASOPHIA」という言葉に対して意見を求められた。おもしろい言葉だなと思った反面、造語で、かつ外国語。抵抗感をもつ人もいると思い、この言葉を広めるための印刷物を作ってみてはどうですかと提案したら、河本さんが「ぜひやってください」と。さらに学生と一緒にやってほしいと依頼を受けました。それで、ボランティアで参加したいという学生中心の若い人たちに集まってもらい、始まりました。彼らを「パラ人」たちと呼ぶことにしました。

    パラサイトのようなもの
    「パラ集長」という立場ですが、ぼくもボランティアの一員。パラ人たちが考えやろうとすることを、基本的には見守ることにしています。誌面は、芸術祭としての PARASOPHIA には直接関係のない内容。創刊号では、PARASOPHIA っていったい何なのか、ああでもないこうでもないと言ってる雑談を、そのままメインの記事にしました。常識的に考えたら、怒られるようなことですよね(笑)。でも PARASOPHIA のペーパーだからといって、その宣伝はしない。 その意味で「半公式」。『パラ人』のスタンスは、いわば PARASOPHIAに寄生する“パラサイト”のようなものです。PARASOPHIAを周知させるという意味では、宿主に利益を与える一方、自分たちはその影で好きなことをする。直接宣伝をしなくても、『パラ人』みたいな好き勝手を許しているという点で、PARASOPHIAの懐の深さがわかる。それがいちばん広報になっていると思います。

  • 見る人を育てる芸術祭
    大学では美学芸術学を専攻していますが、実を言うと芸術にあまり興味はなかったんです。そんな僕がPARASOPHIAに加わったのは、河本信治さんが大学で特別授業を行われた際に、「作家を“見るセンスのある人”を育てていくのもPARASOPHIAが担う役割」という言葉に惹かれたからです。芸術をキュレーションしていく、その世界に触れたい、という思いが芽生えたんです。すぐに河本さんに直談判して、与えてもらった仕事が作家のアテンドでした。作家を空港まで迎えに行って事務局へ案内したり、ホテルのチェックインを代行したり、作家をサポートすることが基本的な業務です。方向音痴なので、任されたときは、少し困惑しましたね(笑)。

    PARASOPHIAの本質
    ある時、スーザン・フィリップスさんをアテンドすることになったんですが、「リサーチに一緒に来ない?」と誘われたんです。それで自転車に乗って数日にわたり、本展が開催される会場や京都の寺社などを案内しました。印象深かったのは、鴨川を訪れた際に、橋の下で自分の声を反響させたり、川辺で練習するブラスバンドの学生たちを興味深げに眺めるスーザンさんの姿。作家がインスピレーションを受けている瞬間に立ち会うことで、PARASOPHIAという言葉の意味を本質的なところで少し理解できたように思うんです。海外からただ作品を運んでくるだけではなく、作家たちが実際にその土地をリサーチして何かを発見し、作品に落とし込んでいく。京都とは別の存在が来て、土地に根ざした人や環境と反応を起こす。その様子に僕自身感じるものがありましたし、作家の感性がこれにどう形を与えようと試みるのかも楽しみです。今後も、PARASOPHIAと関わり、PARASOPHIAを肌で感じていきたいですね。

    写真:オウン・マクティーグ(上)

  • ケントリッジの作品制作に参加
    大学ではウルトラファクトリーという工房のプロジェクトに所属し、ディレクターのヤノベケンジさんをはじめ、第一線で活躍されている日本人作家の制作に携わってきました。その縁で、ウィリアム・ケントリッジさんが手がけたプレイベント《時間の抵抗》の制作アシスタントとして声をかけてもらえたんです。けれど、どれくらいのレベルを求められるのか分からず、最初は悩んでいたんです。そんな時に背中を押してくださったのが、PARASOPHIAの参加作家であり大学の教授でもある、やなぎみわさん。「花ちゃん、行って来なさいよ」と言われ、半ば強制的に参加しました(笑)。

    現場のエネルギーを身近に体感できた
    僕の役割はケントリッジさんが率いる《時間の抵抗》のための制作チームの補助です。主な作業はペインティングやエイジングを行い、インスタレーション空間をつくること。言葉の壁はありましたが、制作に携わる者同士、なんとなく求めるものが分かるので、大きなハードルではありませんでした。むしろ、彼らこそ異国での設営作業のなかで多くの困難にぶつかる。テープ一つとっても規格や色が異なり、代用品を探すのもひと苦労。本当に臨機応変な対応力を求められるんだと思いました。けれど、ケントリッジさんとスタッフとの間には強固な信頼関係があり、自発的にその場その場で決断し、困難を乗り越えていく。作家とスタッフの思考が完全にシンクロしているようでした。制作チームの人たちは、それぞれが専門分野をもっていて、叡智の集合体みたいなもの。本当に格好良かったし、なにより楽しそうでした。そこから生まれてくるものを身近に体感できたことはこれ以上ない経験です。PARASOPHIAに関わったことで未来の選択肢が広がりました。将来は作家か、テクニカルな設営スタッフになるのかまだ分からないけど、美術という円の中に片脚だけでも突っ込んでいたいなと思っています。

    写真:岡崎麻衣(上)、サビーン・トゥーニセン(下)

  • 子どもと美術のよい出会い方を学びたい
    PARASOPHIAの見どころの一つでもある、蔡國強さんのプロジェクト「子どもダ・ヴィンチ」。子どもたちが純粋な好奇心で自由に制作したものを、蔡さんが自身の作品とともに展示するというプロジェクトです。私はその制作助手に応募し、子どもたちの作品づくりをフォローすることになりました。私は普段、絵画作家として制作活動を行いながら、京都市内の高校で美術を教えています。日々思うのは、どうすれば子どもたち一人ひとりの自由な創造性をサポートできるのかということ。たとえば、特別、美術に関心があるわけではない子どもでも、絵を描いたり批評させてみると、独自の感性をもっている子がいたりして、私はそれがとてもおもしろいと思うのです。それぞれの子がもつ魅力の種をのばすことができれば、きっと楽しいことになる。だからこそ、子どもたちと美術の出会いの場を、もっと豊かなものにするにはどうしたらよいか。今回のプロジェクトに参加するなかで、何かヒントを得られたらいいなと思っています。

    参加者全員が主体的に関わる
    最近、友人の6歳の姪っ子とよく絵を描いて遊ぶのですが、固定観念のない子どもの自由な創作には、ハッとさせられることがあります。まだ少ない知識や経験を縦横無尽に使って描かれる絵には意外な色、意外な造形が顔を出し、自分が常識にとらわれていることに気づかされるのです。今回のプロジェクトでは、子どもたちに自由に創作させることを大切にし、制作助手はあくまで技術的な補助のみ。5歳から10歳までの子どもたちがワークショップに参加してくれるので、みんなどんなものをつくるのか楽しみですね。また、このプロジェクトにはマニュアルがほとんどなく、私たちもでき上がりがまったく想像できません。子どもたちがどんなものをつくるのかは未知ですし、蔡さんがそれをどのように作品に組み込んでいくかも分からない。ある意味、すべてが決められていないからこそ、関わる一人ひとりが言われた通りにやるのではなく、主体的に作品をつくっていくことがおもしろい。どんな作品になるのか、今からとても楽しみです。

  • 同じ志をもった幸福な出会い
    当財団は、フリーペーパー『パラ人』のプロジェクトをきっかけに、PARASOPHIAへの助成をさせていただくことになりました。学生さんたちが主体となって、「フリーペーパー」という紙媒体でのPR活動をするという試みは、印刷文化・出版文化の継承と振興を目的とする当財団の活動趣旨とも合致しており、幸福な出会いができたと考えています。
    はじめに『パラ人』のことを伺った時は「タブロイド判って、またずいぶんアナクロなことをするんだなあ」と、私もサブカルチャーのなかで青春を送ったタイプなので懐かしい感じがしました。かつては巷に数多く存在したけれども、いまや珍しくなったインディペンデントな紙のメディア。それを現代の学生さんたちが試行錯誤しながら作り上げる…というのは、逆に意義深いのでは。そうした意味でも支援できることを嬉しく思っています。

    日本人が不得手な「現代美術」と、どうつきあっていくか
    欧米的なパトロネージュ文化、いわゆるメセナ的な活動というものは近代になってから、本格的には戦後に輸入されたものだと思うのですが、日本社会にはまだうまく根付いていないように思えます。「現代美術」という枠組み・ジャンルも当然のように欧米発信のものであり、やはり日本人には自然体で入っていきにくい部分がありますよね。でも、たとえばPARASOPHIAの活動や作品すべてに賛同しなくても、個々の作家のプロジェクトや作品に接してみると、必ず「これはおもしろいな」と感じたり、琴線にふれる部分があると思うのです。ですから、PARASOPHIAを機に現代美術が苦手という人も企業も、一度その思い込みを外して目の当りに体験してみると、いろいろな気づきを得られるのではないでしょうか。 京都全体を巻き込んだはじめての現代芸術祭が開催されるにあたって、どんな形の支援が京都の企業や団体から出てくるか、当財団としても参考にさせていただけたらと思っています。応援する側も刺激を受けながら、京都の文化向上に貢献する。そんな両者にとってプラスな関係が築けたらいいですよね。こうした試みは続けていくことが何よりも大切だと思うので、PARASOPHIAとして芽吹いたものが今後も末永く続いていくように、応援の形を摸索していきたいと考えています。

  • 最先端のアートにふれてほしい
    当社は西陣織の製造問屋です。織物を通じて文化的価値をつくり上げていくことを経営理念としており、呉服、インテリア、ファッション、3つの分野で事業展開をしています。いま新たな柱として力を入れているのが伝統産業と現代アートの融合。そこから文化的価値を生むことです。経済人の立場として考えたとき、21世紀のビジネスにおいてアートは非常に重要な位置を占めると思います。実際、ニューヨークやヨーロッパのアーティストから織物の依頼を受けることもあり、世界規模のムーブメントであると考えています。しかし、現在の日本では若いアーティストを支援する土壌が限られていると思います。最先端のアートにふれる環境があってこそ、次代をリードしていくクリエイターが出てくるはず。若い人を応援し、育てていく。その意味において、今回のPARASOPHIAはまたとない機会だと思い、寄付という形で支援することにしました。世界で活躍するアーティストの作品を多くの方が目にできる、その価値は大きいでしょう。

    京都にとって大きな挑戦
    現在当社では、海外のアパレルブランドやラグジュアリーホテルからの依頼を受け、インテリア生地や壁布などを手がけています。図柄をコンピュータに取り込み、織機と連動させて布地をつくるのですが、制作には大型の織機が必要となります。以前は、幅70cmの布地を織る織機が最大でしたが、ニーズに応えるべく幅150cmまで対応できる織機を開発しました。何十人という職人の知恵を結集させた革新的な技術であり、世界で唯一の織機です。新たな分野への進出や織機の開発など、創業300年余りの伝統をもつ当社でも、常に挑戦と隣り合わせです。PARASOPHIA も京都にとって大きな挑戦となるでしょう。新しいものを常に取り入れていく街ですから、他の地域で開催されている芸術祭を真似したようなものではなく、京都の資源を活かした挑戦を期待しています。初の開催であり決して予算が潤沢ではない。しかし、本当に大切なのはその密度だと思います。500年後の人たちが「先祖はこんなにすばらしいものを残してくれた」と言ってもらえるような、そんな芸術祭を目指してほしいです。

  • 留学生の視点から京都を発信したい
    私は韓国から映像を学ぶために留学してきました。大学の校内で「サポートスタッフ募集」と書かれたPARASOPHIAのポスターが目に留り、この芸術祭の存在を知りました。大学ではドラマや映画の撮影を中心に学んでおり、現代芸術自体に深い興味があったわけではありません。ただ、京都という街に住んでみて本当に素敵な場所だと思い、留学生の視点から京都の良さを発信したり、京都と芸術を繋ぐ手助けができるのではと思ったのです。それにさまざまな分野に触れてみることで、自分の視野を広げたいという気持ちがありました。

    芸術の見方は千差万別
    本展の開催1年前、プレイベントとしてウィリアム・ケントリッジさんの《時間の抵抗》が展示された際に、会場の受付や展示室の整理などを担当しました。来場者の方と直接触れ合う仕事もあるので、なかには質問をされてくる方もいらっしゃいます。最初はうまく答えられなかったこともあり、作家のことを少しでも伝えようと、ケントリッジさんについて私なりに勉強しました。そのかいあって、来場者の方と作品の見方について意見を交わすこともできました。作品を観に来られる方は、小さな子どもからお年寄りまで幅広く、作品の受け止め方も人それぞれです。その反応を間近にみて、私のなかにあった芸術に対するイメージが大きく変わったように思います。現代芸術はなんとなく難しいというイメージがあったのですが、作品の捉え方は人によって千差万別。だからこそ、自分とはまったく異なる意見を目の当たりにするし、そこにこそ芸術のおもしろさがあると思えるようになったのです。サポートスタッフのメンバーの中には、芸術や美術を専攻している学生もいれば、ご年配の方や専業主婦の人もいらっしゃいます。向き不向きとは関係のないところにサポートスタッフの醍醐味があると思うので、気負わずに参加されてみてはいかがでしょう。

    「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015 プレイベント[作品展示]ウィリアム・ケントリッジ《時間の抵抗》」2014 元・立誠小学校(京都市中京区)
    上:会場入口 写真:四方邦熈
    下:スタディールーム 写真:柳瀬杏里

See you in Parasophia PARASOPHIAで会おう。